二人の穏やかな日常
「どうでしたか」
「ええとまず、目を閉じて待ってる間ほんの数秒だったかと思うんですけどもその一瞬って本当に尋常じゃないくらい緊張して、なんか目を閉じてるだけに今めちゃくちゃ見られてんじゃないかとか、今どのへんに斎藤さんの唇があるんだろうとか、いろんなことを考えてしまって。直前になって、ああこれ鼻息は止めた方が良いんだろうか、くそう聞くの忘れた!ていうかそもそも私たち唐揚げ食べたばっかだけど大丈夫かな!?って思ったんですけど、いざ唇が触れるとそういうことが全部吹きとんで、おお唇と唇が触れるとこんな感触なのか思ったより柔らかいぞ、いや待て私としては柔らかけど斎藤さんの方はどうなんだろう?私の唇は固くないだろうか?とかいろいろ考えましたが、結論を言うと、感動しました」
どうでしたかと聞いたのは俺だけど、まさかこんな感想文並みの詳細な感想が返ってくるとは思わなかったので、恥ずかしくなった。
でもまあ、感動してくれたんなら、良かった。んだろう。
「でも大人のキスはまだ控えときましょう。我慢が効かなくなったら大変です」
「我慢?」
「気にしなくて良いです」
しかし大人のキスをしたあとでまたこんな詳細な感想を聞かされようものならきっと恥ずかしくなって仕方ないので、そのときは聞くのはよそう。と思う。