二人の穏やかな日常
皆から見えなくなったところまで連れてこられたところで、彼の足が止まる。
「ちょっとどうしたんですか急に……」
「斎藤さん!初対面でおこがましいですが、モデルの女の子紹介してください!」
気持ち良い程ハキハキした声で言う。
やはり彼はシンデレラになっていても、前原さんの話通り、とんでもないチャラ男だ。
「無理です」
「なんでですか!」
「前原さんから聞く限り、君に女の子を紹介したとして、真剣に付き合うとは思えない。前科があるでしょう」
「くっ……あいつめ、そんなこと話してんのか……」
あくまで仕事仲間として連絡先を知ってる女性は勿論居るけども、二股男に紹介なんて、とてもじゃないけど無理だ。
「……斎藤さん、じゃあ、トミー知ってますか?」
ぴくり。と、反応を隠せなかった。
トミーといったら、前原さんに想いを寄せていた男の子のことだろう。
一瞬動揺したのを見落とさなかった堀井くんは、ニヤリと嫌な笑みを浮かべてから、ドレスの胸元から数枚の写真を取り出した。
「斎藤さん、これ何の写真だと思います?」
「な、んです」
「この日のために用意した、まえほっぴーを盗み撮りした写真です」
思わず、眉間に皺が寄る。