二人の穏やかな日常
「全部で十枚あります。トミーは十枚、一万円で買うって言ってます」
「は?」
「どうします?トミーももう諦めたとはいえ、まえほっぴーのこと好きでしたからね、この写真を使って何するんですかねー?男子高校生ですからね、そりゃもう元気ですよ、まえほっぴーの写真であんなことやこんなことを想像して……」
「……分かりました」
そこから先はもう恐ろしくて頭がくらくらして聞けなかった。
「一万五千円出しましょう」
「と、女の子の連絡先で十枚渡します。それで、トミーには一枚たりとも渡しません」
「……連絡先もですか」
「トミーに渡して良いんですか?男として、彼女が他の男にそういう目で見られるなんて平気なわけないですよねー?」
なんて恐ろしいんだ最近の若い人は。
ただの恐喝だ、オヤジ狩りだ。
「……分かりました」
「よっしゃ!男子高校生求めてる美人でお願いします!なるべく巨乳で!」
「はいはい」
と、スマホの電話帳を開いて、条件に合う女性のアドレスを紙に書き写した。
それにさっき言った通り一万五千円つけようとしたら「あ、良いですよお金。俺もそこまで鬼じゃないんで」と遠慮された。
ありがたいけど、もう完全にアドレス目当ての脅しだったんじゃないか。
そして、十枚の写真とアドレスを書いた紙を、交換した。
「まいどー!」
「これガチの盗み撮りじゃないですか……」
受け取った写真たちは、本当に前原さんの写真だった。
授業中ぼんやりしてる前原さんとか、お弁当を食べてる前原さんとか、どれもカメラ目線のものがない。