二人の穏やかな日常

眉間に皺を寄せて考え込んでいると、結局いつの間にかそのクラスの教室までやって来てしまった。

列の前の方で「何名様ですかー」と聞こえる。


「斎藤さん何怖い顔してんですか?」


俺と手を繋いだまま前原さんが俺の顔を覗き込んできた。


「お前な、文化祭といえ立派なデート中だろ今。デート中に眉間に皺寄せる男がいるか」


兄ちゃんにまで怒られた。


「すみません前原さん……」
「いえ、どうかしました?」
「駄目だやっぱ我慢ならない」


こんな可愛い格好した彼女を、その男にやすやすと見せるわけにはいかない。

自分が来ていたジャケットを脱いで無理矢理前原さんに着せた。


「え、」
「せめて肩は隠しましょう」


首元と肩が出る露出高めのドレス。
凄く綺麗なんだけどやっぱり落ち着かない。


「せっかく可愛いドレス着てるのに……」


不満そうにしながらも前原さんはそのジャケットの袖に手を通してくれて、兄ちゃんと智輝はそんな俺を呆れた目で見ていた。
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