二人の穏やかな日常
俺たちまで順番がまわり、ようやく教室に入れる。
室内は風船とかリボンとかで、可愛らしく装飾されてた。
と、教室内で一際目立つイケメンが、視界に。
彼は真っ直ぐと、俺の隣の前原さんだけを見ていた。
ホーリーくんの一件からして、トミーって男も普通に日本人なんだろう。
ピン、と、男の勘が反応。
こいつ絶対トミー。
「まえほっぴー!」
2Dのクラスティーシャツを着たその男が近付いてきた。
「どうしたのその格好!シンデレラだ!」
「あ、うん、いろいろありまして」
「すっごい可愛い!」
「へへ」
「でも何そのジャケット。脱ぎなよ」
「いやー、これは……」
わざとらしく大きめの咳払いをしたところで、ようやく彼が俺のことを見た。
ずっと隣にいたぞ。
「トミーです。で、斎藤さんだよ」
前原さんは俺とトミーをそれぞれ紹介してくれた。
その後ろで兄ちゃんと智輝が「俺はこいつの兄です。ほら智輝も自己紹介しな」「俺は修一の、兄ちゃんの、子供で、四歳だ!」と。
二人にはそれなりの愛想で会釈したあと、トミーくんは俺のことを舐め回すように上から下まで見たあと、「……俺の方が微妙に格好良くね」と呟いた。
ほう。
「君は何を根拠に自信持ってるのか分からないけど、言っとくけど俺は中三からモデルやってるし、そもそも前原さんの彼氏は俺だからね。君身長は?」
「180ちょうどですけど」
「ふうん、俺186」
「……そんなデカかったら逆にださいっすよ」
「まあまあ。二人とも格好良いって。とりあえずトミーくん、案内してくれない?俺ら腹減ってるし」
一触即発状態だった俺たちの間に兄ちゃんが入って止めてくれた。
そうだ俺たちは食事に来たんだった。
仕事しろトミー。
「……席案内します」
愛想のない店員だ。
これならいくらチャラ男でもチビでも、ホーリーくんの方がよっぽど可愛いげがあって良かった。