二人の穏やかな日常
ありがとうも言わず無視してコーヒーを一口飲んだ。
コーヒーは普通に美味い。コーヒーは。
するとトミーくんは俺の隣の空いてる席に腰を下ろしてきた。
ぎょっと見てみると「ちょうど店番終わったとこなんです。ここ良いですよね?」と微笑まれた。
「どうぞ」
引き攣った笑顔で返す。
相手が下手で来てるのにあまり大人げない真似できない。
「俺ちょうどシンデレラ見に行けなくてさー、どうだった?ウケた?」
「うん、盛り上がった!ホーリーとか、〝俺これで女子から人気出るかも!もしかしてファンクラブとか出来るんじゃないかな!?〟ってはしゃいでたよ」
前原さんの言葉に、トミーくんの眉間に皺が寄った。
「……それはないでしょ」
低く返したトミーくんの声が、どこか拗ねているような。
……ああ、そういえば。
彼は今、ホーリーくんに走ってるみたいな話だったっけな。
「君も大変だね」
思わず口が滑って言ってしまうと、今までより一際鋭い睨みの効いた視線で見られた。