二人の穏やかな日常

「元はと言えば、あなたのせいでもありますけどね」


う……、そう言われると、辛い。


「まあ俺は、逆恨みとかしませんからご安心を。二人のことを応援するつもりはさらさらありませんけど」
「はは……」


俺たちのテーブルの回りだけ嫌に冷めた空間になった。

前原さんと兄ちゃんも空気を察してか面倒なのか、一言も喋らず、多分今無心状態。

智輝だけそんなこと気にせず、あの明るい声でどら焼きマンマーチのメロディーを歌っている。子供って素敵だ。


「……実際のとこ、どうなの?」
「はい?」
「前原さんが好きなの?ホーリーくんなの?」


もっとオブラートに包んだ言い方で、せめて前原さんの居ないところで聞きたかったけど。

前原さんはぎょっとしたように俺を見て、兄ちゃんもこの妙な事態に口を開けて、智輝は首を傾げるだけだった。


「……分かんないけど、やっぱりまだ、まえほっぴーが他の男と仲良くしてんのは、見てて腹立ちます」


真面目な表情で呟いた彼は、本当に男の顔で、俺は気が気でなくて。


「トミー……」
「ごめんねまえほっぴー、応援してあげられなくて」


その優しい微笑みは、俺でさえ切なくなる。



しんみりした雰囲気を破るように、
「トミー!」
背後からホーリーくんの叫び声が聞こえた。
< 157 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop