二人の穏やかな日常
「元はと言えば、あなたのせいでもありますけどね」
う……、そう言われると、辛い。
「まあ俺は、逆恨みとかしませんからご安心を。二人のことを応援するつもりはさらさらありませんけど」
「はは……」
俺たちのテーブルの回りだけ嫌に冷めた空間になった。
前原さんと兄ちゃんも空気を察してか面倒なのか、一言も喋らず、多分今無心状態。
智輝だけそんなこと気にせず、あの明るい声でどら焼きマンマーチのメロディーを歌っている。子供って素敵だ。
「……実際のとこ、どうなの?」
「はい?」
「前原さんが好きなの?ホーリーくんなの?」
もっとオブラートに包んだ言い方で、せめて前原さんの居ないところで聞きたかったけど。
前原さんはぎょっとしたように俺を見て、兄ちゃんもこの妙な事態に口を開けて、智輝は首を傾げるだけだった。
「……分かんないけど、やっぱりまだ、まえほっぴーが他の男と仲良くしてんのは、見てて腹立ちます」
真面目な表情で呟いた彼は、本当に男の顔で、俺は気が気でなくて。
「トミー……」
「ごめんねまえほっぴー、応援してあげられなくて」
その優しい微笑みは、俺でさえ切なくなる。
しんみりした雰囲気を破るように、
「トミー!」
背後からホーリーくんの叫び声が聞こえた。