二人の穏やかな日常
「あの!モデルさんなんですよね!?」
「え、そ、うです、けど……」
「僕のクラスファッションショーやるんですけど、ショーに出る皆にウォーキングをご教授していただけないでしょうか!?」
「は!?」
真面目そうな青年は真っ直ぐと俺の目を見てくる。
ファッションショーって言うと、ホーリーくんが楽しみにしていたやつだろうか。
でもウォーキングとか言われても。
「そんな僕はご教授するほどのたいそうなウォーキングは……」
「お願いしますもう時間が無いんです始まっちゃうんです!」
すごい力だ。
と、その青年に捕まれてる腕に視線を落とす。
「……分かりました」
その熱意に、負けた。
「え、ちょ、斎藤さん?」
「ごめん兄ちゃん頼んだ。すみません前原さん、すぐ戻りますから!」
残りのアイスコーヒーを一気に飲み干すと、兄ちゃんに前原さんのことを頼んで、その青年のあとに続いて走った。