二人の穏やかな日常

どこから話そうかな、とそれはそれはわくわくした表情のお兄さんは、斎藤さんからしたらすごく質の悪いお兄さんだろう。けど。

私としては大歓迎だ。


「そうだなあ、まあ結論から言うと、あいつは本当に仏みたいな男で」
「……仏」


お兄さんのその表現が、妙にしっくり来てしまって。
思わず吹き出しそうになる。


「そうそう驚いたのがさ、あいつが高二だったか高三だったか」
「ふんふん」
「なんかすっごい落ち込んでて、超暗かった日があったんだ。で、どうしたんだよ?ってこっちも聞くじゃん」


斎藤さんが暗い?

そりゃまあ盆栽とかしてるし地味だし明るくはないかもしれないけど……斎藤さんの気分にむらがあるなんて、想像もできない。

いつもホニャララ笑ってるから。


何があったんだその日。


「試験期間だったんだよそのとき。で、当時あいつ睡眠削るタイプでさあ、朝登校中の電車の中で寝たらしくて」
「へー」


斎藤さんにも高校生の頃があったんだと思うとなんだか不思議。

そして試験勉強に疲れて電車で眠る斎藤さんを想像したら、萌える。
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