二人の穏やかな日常

それから暫くお兄さんと智輝くんを会話を続けた。

なんとお兄さんも、元モデルらしい。


「あいつが中三で俺が高一のとき一緒に歩いててスカウトされたんだ。なんか初めは、イケメン兄弟!って売り出そうとしたらしいんだけど、いやー俺は向いてなかったわー」


懐かしむように語ってくれるお兄さん。

向いてない?この人が?
顔は斎藤さんとほぼ同じだしスタイルだって……それに性格も斎藤さんよりははるかにモデルっぽい華やかな性格してると思うけど。


「なんか俺はね、服より俺を見ろ!って主張が激しいんだと。その点弟は中身地味だけど洋服立ててくれて助かるなー、とか言われて」
「ああ……なるほど」
「何納得してんの。それで俺もこんなのやめてやらあっ!て。夏に暑い格好したり冬に寒い格好したり、耐えられないよ。あいつは何でああいうの顔に出ないんだろうなあ、そこはやっぱプロ根性か……」


へええ、と私は長く息を吐くように感嘆の声をあげた。


「あいつの仕事ぶりは地味だけど、安定してるし信用されてるし、なんだかんだ一目置かれてると思うよ仕事場でも」
「え、そうなんですか?」
「そ。だから百合ちゃんもその辺安心して良いよ」
「ふうん……」


斎藤さんって、すごいんだ。
あまりお仕事無いんですね、とか言って申し訳なかったな。

と、反省した、そのとき。


「遅くなってごめん!」


と一際大きな声の人が、教室に入ってきた。
< 165 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop