二人の穏やかな日常
一難去ってまた一難
富井くんから愛の告白を受けた月曜日、地獄の五日間が終わり、今日はようやく学校が休みだ。
待ちに待っていたお休み。
私は思う存分ベッドでごろごろしていた。のに。
「おい百合!」
弟の隆二が勢いよく私の部屋の戸を開けてズカズカと入ってくる。
ノックなんて勿論しない。
こいつノックって言葉すら知らないんじゃないだろうか。
「お姉様と呼べアホ」
私の弟はどうしてこんなに生意気なんだろう。
「あ?テメエジュース買ってこいや」
「テメエで買ってこいや」
「じゃんけんするか?」
ベッドから視線だけ隆二に向けるとえらっそうに仁王立ちで私を見下ろしている。
いつ見ても自信に満ち溢れた顔だ。
こいつ実は私の弟じゃなくてホーリーの弟じゃないの?
「……負けるから嫌」
「じゃあ行ってこい」
「めちゃくちゃだよ理屈が」
こいつはこんなに生意気でしかもまだ小四なくせに彼女がいるらしい。
たまに「今日はデートなんだよなー」なんてわざわざ私に言ってから出掛ける。
ええ、ええ。どうせ私は高校生のくせして彼氏の一人もいませんよ。
小学生は大人しくコロコロコミックでも読んでろっつーの。
「よっこいしょ」
ベッドから重い腰を上げた。
「ほら行くよ」
不満たらたらでも結局最終的にはいつも隆二の言うことを聞いてしまう。姉の性だ。