二人の穏やかな日常
「それにその男、イケメンじゃん。何デートのお誘い断り続けてんだよお前の分際で」
「……好きでもない人とデートとか」
私が小さな声で反論すると、隆二は呆れたように大きく息を吐き出した。
「じゃあ誰か好きなやついんの?」
「別に今は」
「あ、隣の……斎藤さん?だっけ」
ぴくり、と肩が揺れた。
「何言ってんのあの人とは会ったとき軽く話すくらいしか」
慌てて取り繕ってみたものの、隆二はそれを見逃さなかったらしい。にやりと嫌な笑みを浮かべた。
「家に上がった間柄じゃん。俺は良いと思うよあの人でも。モデルだから売れたらがっぽり儲けるだろうしなあ、そうなったら玉の輿か~」
がっぽがっぽ、と呟いて鼻の下を伸ばす隆二は、金の亡者のよう。嫌だこんな小学生。
「玉の輿って、私は別に……」
「私は別に、そんなことで好きになったんじゃない。って?」
う、と一瞬言葉が出て来なかった。
隆二の笑顔がまたいやらしさを増す。
「だから違」
「まあそううまくいくわけないよなあ。あんなイケメンがお前になびくとは到底思えないし?」
隆二は私の肩に手を回しぽんぽんと叩きながら、何度も頷く。……ちょっと、むかっ。
「……分かんないよそんなの」