二人の穏やかな日常

斎藤さん、赤くなる


「ちっち、ホーリー、どうしよう……」


月曜日。
また二人より後に登校した私は、さっそく例の件を話さずにはいられなかった。

何事かと二人が私を見る。


「富井くんと映画見に行くことになった……」
「ええっ!?」
「はあっ!?」


二人がのけ反るように驚いた後で暫くの沈黙が流れた。

二人とも芸人顔負けのリアクションをしてくれて、それは少し元気をくれるけども。


「イケメンパワーに負けたかまえほっぴー」
「まえほっぴーがそんなのに負けるわけないじゃん。恋愛なんか興味ない枯れた女なのに」
「弟が勝手にライン返信してガッツリ約束取り付けて」


ちっちの〝枯れた女〟という言葉には敢えて触れずに、スカートのポケットからスマホを取り出して例の画面を二人に見せた。


「うわあ……これ見るからにまえほっぴーの返事の仕方じゃないよ。普通気付きそうもんだけど」
「本当だ。まえほっぴーの返事なんか半数が〝むり〟〝りょ〟〝へえ〟だからな。こんな顔文字とかつくわけねえのに」


机に鞄を置いて椅子に座って、項垂れる。

ちっちがぽんぽんと優しく慰めるように私の背を叩いてくれた。
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