二人の穏やかな日常
リビングに行くと、晩御飯のカレーがテーブルに置かれていて、お母さんはエプロンを外して畳んでいるところだった。
「あれお母さんどっか行くの?」
「回覧板だけさっと回して来る」
回覧板……。
たしか、うちから次に回すのは斉藤さんの家だ。
「私行く」
「え?良いわよ別に」
「良いから良いから」
お母さんの手から回覧板を受け取った。
「そう?じゃ、お願い」とお母さんは不思議そうな顔をしながらも嬉しそうだ。
「珍しいな百合が自分から手伝いするなんて」
隆二がまたあのにやけた顔で私を見て、手を合わせた。
いただきます、と言って大きな一口でカレーを頬張る。
「まあね」
隆二の腹立たしい顔に気付かないふりをして、出て行った。