二人の穏やかな日常

「あ、すす、すみません……そんなこと言ってくれるの親くらいなので……ちょっと動揺しました……嬉しいですありがとうございます……」


まるで冷ますように手の甲を頬に当てて、しどろもどろにそう話す斉藤さんが、あまりに珍しくて、可愛くて。
私まで頬が緩む。


「照れてるんですか?」
「いや正直モデルになる前は格好いいなんて言われ慣れてたんですが、モデルになると周りがもっと格好いいので……面と向かってそんな褒めてもらえると照れますね」
「すごい。斎藤さんが赤い」


覗き込むように斉藤さんを見つめていると、また更に赤くなった斉藤さんは「あんまりからかわないでください」と言いながら私の肩を優しく押し退けた。


「でもやる気出ました。明日撮影あるので、今から食べようと思ってたポテチはやめます。さっさと寝て明日万全の状態で撮影に挑みます」


斉藤さんは今度は、爽やかに微笑んでみせた。


「単純ですね」
「これから毎日格好いいって言いに来てくれますか」
「さすがに私も毎日言うのは恥ずかしいです」


暫く玄関先で、二人でにやにやしていた。

その空間がなんとも心地良くて。

斉藤さんと居るとどうしてこんなに落ち着くのか、不思議な人だ。と思った。
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