二人の穏やかな日常
映画が終わったあと、少し遅めの昼食がてら近くのファーストフード店に二人で入った。
同じように試写会帰りの人で混んでいた店内は、多分ネタバレの宝庫。
まだ見てなくてこれから見ようとしてる人がいたら地獄だ。
「面白かったね!」
「うん」
映画は、存分に楽しめた。
小説嫌いだけど家に帰ったら隆二から原作借りようと思うくらいに面白かった。しかも試写会だからタダ。
富井くんグッジョブと言いたいくらいだった。
「俺は竹下がエリちゃんに告白されて、ずっと一緒にはいられないからって、他の理由つけながら断るシーンがグッときた。自分も好きなくせに身を引くのが、逆に男らしいというか」
「うんうん。あとさ、エリちゃんが竹下が未来人だって気付いてたのに結局最後別れるときもそれを言及せず他愛もない話をしてあげる優しさが素晴らしいと思った」
「弟に、原作読んでても納得いくと思うって言ってあげて良いと思うよ」
「本当?良かった良かった」
二人で余韻に浸りながらポテトをばくばく食べた。
帰ったら隆二におすすめしてあげよう。とホクホクした気持ちでオレンジジュースを口につけたとき。
「ところで百合ちゃん、俺が百合ちゃんに惚れた理由って、話したっけ?」
そんなすっとんきょんなことを言われ、ちょうど飲み始めたオレンジジュースが気管に入ってむせた。