二人の穏やかな日常
好きなタイプは
あの映画以来、斉藤さんとはなかなか話す機会がない。
顔は合わせるっちゃ合わせるけど、お互いなかなかタイミングが合わないというか、私もなんかこう、避けてしまうというか。
それで、あまり会話ができない。
別に、最初の頃はそうだったし、その頃に戻っただけなんだけど。なんとなく、モヤモヤする。
「え、D組もう英単語の小テスト終わったのか!富井、何が出た!言え!」
「うわホーリー、汚いそれ!」
「protectしか覚えてないや。ていうか範囲少ないんだから普通に単語帳開いた方が良いよ」
それに反して富井くんとは、どんどん距離を縮めている。
正確に言うと富井くんと、ホーリーとちっちが、だけど。
「単語帳?そんなもの俺が持ち歩いてるわけないだろ!」
ないだろって、何を誇らしげに。
「ていうか百合ちゃんも単語帳開いてないけど良いの?次の時間なんだよね小テスト。もしかして余裕?」
富井くんが私に話を振ってきた。
「ああ。まえほっぴーはね、もう諦めてるから。こう見えてホーリーより馬鹿なの」
のに、私が答える前にちっちが答えた。
え、まじで?と丸い目をして意外そうに私を見つめる富井くん。