二人の穏やかな日常

帰り道のコンビニで、またあの雑誌を買った。
今日が発売日だったから。


ビニール袋を下げながら玄関までたどり着いて、鞄の中から家の鍵を取り出した。
ふと、隣の斉藤さん家の扉を見つめる。

……いるのかな。

別に用事もないのに訪ねるわけにはいかないし。
さすがに引かれそうだし。

よし、今度顔合わせたときは避けずに私から会話してみよう。そもそも避ける理由なんて、無いんだし。


「ただいま」


意味不明の決意表明を胸の中でしながら、誰もいない家の中にそう挨拶した。

買った雑誌でも見てから、今日の英単語のテストのやり直ししようかな。

テストは15点満点の2点だった。
富井くんいやトミーが言っていたprotectと、poisonだけ書けた。


また前のように、ベッドに座って雑誌を広げた。

斉藤さんが出てくるまでページを飛ばす。
女の子のファッションでさえ興味ないのに男物のファッション雑誌を純粋な目で楽しめるわけがない。

私の目的は斉藤さんだけだった。

は。


「いや、ていうのは、斉藤さんがお隣さんで知り合いだから、知り合いが雑誌に出てるなんて誇らしいから斉藤さんが見たいんであって、別に深い意味は」


誰もいない空間でそこまで一人言を言ったあとに、ため息をついた。

……誰に言い訳してるんだ、私は。
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