二人の穏やかな日常
「返事に困るんでやめてほしいですね」
「私恋人できたことないし仕事もしたことないけど、仕事と恋人の大事さは別のベクトルを向いてると思うんです」
「そうなんですけど、そんな回答求めて聞くわけじやありませんから、そういうこと聞く人は」
斉藤さんは心底うんざりした表情で、斉藤さんってこんな顔するのか、と少し意外だったり。
「なるほど。斎藤さんも苦労されたんですね。だてに年とってませんね」
「年とってるって言い方引っ掛かります」
でもやっぱり、すぐ笑顔になる。
「斉藤さんって、盆栽とか育ててそうですもね」
「……育ててますけど」
「えっ!?育ててんの!?……あ、すみません」
あまりの驚きに思わずため口を聞いてしまった。
だって、だって、冗談で言ったのに。
まさか本当に育ててたとは。
まじかこの人、まじか。
「へー、ちょっと見てみた」
「見ます!?」
何気なく見てみたいと言おうと思ったら、食いぎみの斉藤さん。
こんなに目を輝かせてる斉藤さん初めてなんだけど。
まるで少年のように純粋な瞳。
やってることは盆栽だけど。
「いや僕ね、盆栽はなかなか自慢なんですよこれが!しかも今がちょうどなかなか良い塩梅でね!」
と、何の迷いもなく私の腕を掴んで自分の家に招き入れたんだけど、良いの?いや別に斉藤さんだから何かやばいことされる心配はしてないけど。