二人の穏やかな日常
「お邪魔します、あ、ルンバだ。可愛い」
「可愛い……?変な趣味してますね。それ一週間くらい前に買ったんですよ。ルンバなんかどうでも良いから見てください」
「はいはい」
斉藤さんに腕を引っ張られてベランダに出た。
なるほどたしかに盆栽がある。
しかも一つじゃない、三つある。
「どうですか」
盆栽ほど感想聞かれて困るものってないよ。
ちらりと隣を見れば、やっぱりわくわくした目で私を見つめていた。
「いやなんというか、風格を感じます。お見事だと思います」
「分かります?さっすが前原さん!」
「あ、これとかこのへんが自然な美しさでね」
「そうなんですよ!」
どうやら私の言っていることは的を得ているらしい。
喋れば喋る程に斉藤さんのテンションが上がっていく。
「前原さんがここまで分かる人だとは。若いのにお見事です」
「はあ、私も自分で自分が怖いです」
突然「そうだ!」と顔を上げた斉藤さん。
すぐさま私に視線を合わせて「お願いがあります」とそれはそれは格好いいキメ顔を見せてきた。
瞬間、これは何を頼まれても私は断れないだろうと覚悟を決めた。