二人の穏やかな日常

「好きって自覚してから告白の決意に一分もかからないやつ初めて見たぞ!」
「え、そう?だって振られるなら振られるでサッ!パッ!と振られた方が楽じゃん」


ようは恋をしてる自分にあまりにも慣れてないから、長々とこのむず痒い気持ちを味わうのは辛い。ってことで。

それなら振られてさっと諦めたい。

いや勿論受け入れてもらえたらそれが一番なんだけど。


「いやいやあのね?普通は、振られて気まずくなったらどうしよう……とか、それならいっそずっとこのままの関係でいた方が……とか健気な葛藤が生まれるもんなんだよ?」
「そうなの?でも多分振られても気まずくはなんないよ」


斎藤さんは多分、私を振ったその翌日でも朝会ったらいつものように優しい笑顔で、「おはようございます」と言ってくれると思う。

というか多分、そういう人だから、好きになったんだと思う。


頑なに告白の意志を変えない私を見ながらホーリーがちっちに
「ほらこいつ十七年恋してないからさ……人とはあまりにも恋愛観ズレてんだよ」
とこそこそと吹き込んでいる。

ちっちも「あー」とか納得してて。

おい。聞こえてんだぞ。


「終わりだ……俺の人生は終わった……」


トミーは、ふらふらと覚束無い足取りで教室から出ていった。
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