二人の穏やかな日常
「だったら斎藤さんは常に切り捨てで計算しましょう。私は常に切り上げ。そしたらあら不思議いつでも同い年もしくは私が年上」
「……おめでたい脳内ですね。そんなもんですか」
「そんなもんです、年齢なんて」
斎藤さんはふっと笑った。
そうかー、そんなもんかー、そうかもなー、とふわふわ一人言を呟く。
そして今度は、真顔ではなく笑顔で、だけどやっぱりどこか真剣味を帯びた表情で、
「つまり前原さんって、僕のことが好きなんですよね?」
と、私の心臓をこれ以上おかしくさせるような台詞を言い放った。
「うっ……」
と、心臓を撃ち抜かれた私を楽しそうに見ている。
「そうです。……す、き、です」
「僕も好きですよ」
「はは……は?」
ちょっと待って?何今のさらっとしたやつ。
お?ん?
「好き?」
「好きです」
「本当に?」
「本当に」
「本当に本当にほんっとーにですか?」
「本当に本当にほんっとーに」
「盆栽より、リッチコンソメのポテチより?」
斎藤さんはふっと笑って
「当たり前です。比べる対象そんなんで良いんですか」
と私の目を見た。
そんなんって、そんなんって、だって盆栽とリッチコンソメは斎藤さんの大好きなものなのに。
私はそれ以上ってことで、良いんだろうか。
「それって、かなり嬉しいです……」
両手で頬を押さえて小さく呟いた。