二人の穏やかな日常
「本当は、フランスで、いろいろ考えたんですよ」
斎藤さんは観念したかのように話し始める。
「前原さんには何か違う、形に残るようなものを贈りたいけど、アクセサリーとか、彼氏でもないただの隣人が渡したって重いよなーとか。引かれるかなーとか」
照れ臭そうな斎藤さんの表情は、初めて見る。
すごいレアだ。
なんか。
「愛おしいですね!」
ハキハキとした元気な声で言えば、斎藤さんはぎょっと私を見た。
「何か変なこと言いました?」
「い、いえ、良いんです気にしないでください。まあとにかくいろいろ葛藤して結局無難にキーホルダーになりました」
「可愛いですこれ。今日皆誉めてくれました」
そう言ってスクールバックに飾ったキーホルダーをつんとつついたら、斎藤さんは照れ臭そうに、だけど嬉しそうに、はにかんだ。