二人の穏やかな日常
恋人編
もう一波乱①
ふわふわと浮わついた気持ちのまま隣の自分の家に戻った。
もう隆二もお母さんも帰ってきているらしい。
「おっせーよ百合、どこ行ってたんだよ」
「うんちょっとね」
「何にやけてんの?きっしょ」
「ふふ」
今の私は隆二の暴言も笑顔で対応できるほどに上機嫌。
きっと少女漫画だったら私のまわりには花が散りばめられてるんだろうな。
「お父さん飲んで帰ってくるみたいだから先に晩御飯済ませちゃおうだって」
隆二が言った。
エプロン姿のお母さんが台所からおかずを運んでくる。
昨日の残り物の煮物。
私と隆二も手伝って、三人食卓に着いたところで
「で、百合どこ行ってたの?隆二鍵持って行ってないんだから困るでしょ?」
とお母さんが笑顔を崩さずに言った。
……怖い。
ちょっと。で済まされる感じが、とてもじゃないけどしない。
待てよ。別にごまかす必要もないんじゃ。
隆二やお母さんは日頃から私がデートもせず家でゴロゴロしてるだけなのを嘆いて馬鹿にしていたし、斉藤さんとのお付き合いを反対する理由はない。はず。
「実はね、隣行ってたの」
「斉藤さん家?」
隆二の言葉にぎこちなく頷く。
このマンションの主婦からは絶大な人気を誇る斉藤さん。例に漏れず、うちのお母さんも斉藤さんのファンではある。
隆二なんて「百合が斉藤さんと付き合えば玉の輿!」なんて考えてる程だし。
「で、それでね……告白してきたんだよね、さっき」
隆二が漫画のように箸を落とした。