二人の穏やかな日常
お母さんはお父さんのことをまーくんと呼ぶ。
付き合ってる頃からずっとで、変えられないらしい。
お母さんはいつもふわふわしていて、天然ボケ。
一方お父さんは、優しいけどとにかく真面目で、とてもじゃないけど、私と斉藤さんの交際を認めるとは思えない。
その考えは、天然ボケは入っていてもお父さんとラブラブなお母さんも同じらしい。
「そうなんだよね……」
斉藤さんには「そんなもんです、年齢なんて」と言っておいて何だけど、やっぱりそこが一番のネック。
本当はどちらかといえば私が斉藤さんに手を出したんだけど、お父さんからすれば「隣に住む男が二十四にもなって高校生のうちの娘に手を出しよって、ふしだらな!」と言いたいところだろう。
「しばらくはまーくんには内緒ね」
お母さんは人差し指を口元に当てて、私と隆二にそう言った。
何か秘策でもあるのか。
「外堀から埋めていくわよ」
そうにやりと呟いたお母さんはさながら戦国武将のようだ。
ふわふわと頼りないように見えてお父さんの扱いならお母さんが一番分かっている。
実はうちの主導権を握るのは、お母さんだ。