二人の穏やかな日常
「本当ですか?良かったー」
土曜日の午後、斉藤さんの家で暫く引き延ばしになっていた盆栽鑑賞会。
この間のお父さんの反応を話したら、斉藤さんは安心したように胸を撫で下ろした。
「モデルだけど全然気取ってなくて……とかなんとか」
「うんうん」
「まあ斉藤さん容姿は置いとくとしても、中身モデルらしさゼロですもんね」
「おい」
斉藤さんは拗ねるように二袋目のポテチを開けようとする。止めるべきか迷ったけど、まあ良いか。
「それより斉藤さん!私と隆二がお風呂で歌ってるの、聞こえてたんですか!?」
今回のメインのお喋りはこれだ。
盆栽鑑賞会というより私は、これを聞きにきたようなもの。
「あ、聞いたんですね。前原さんは選曲渋いですよね毎度。演歌ばっかり。でもこぶしばっちりですよ!」
「わーい!……じゃなくて!教えておいてくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!」
私の歌声を褒めて立てた斉藤さんの親指をぎゅっと握る。
斉藤さんは首をかしげた。
「恥ずかしい?あれだけ大声で歌っておいて?多分僕だけじゃなくて上下左右聞こえてるんじゃないですかね」
「そんな馬鹿な……」
「気にしなくて大丈夫ですって。クレーム来たことないでしょ?皆楽しく聞いてるんですよ、前原さんと隆二くんの歌声」
だからほら落ち着いて盆栽見ましょう、そう促されて、ため息が出た。