二人の穏やかな日常
「ささ、上がってください」
「失礼します」
斉藤さんが家に上がる。
なんだか不思議な光景。
「斉藤さん斉藤さん」
「はい」
リビングに向かう途中の斉藤さんの腕を掴む。
「スーツ、滅茶苦茶格好良いですね……!」
さすがモデルだけあって、スーツなんて着たらスタイルの良さが更に引き立って。
私はまた、ハートを撃ち抜かれた。
「えへへ、モデルですからね」
「うふふ」
二人立ち止まって微笑みあっていたら妙に突き刺さるような視線を感じて、ふと見るとお母さんと隆二がしらけた目で私たちを見ていた。
二人して咳払い。
気を取り直して、四人でリビングのテーブルを囲んだところで、皆で視線を合わせて頷いた。
「皆で力を合わせて、お父さんに二人のことを認めてもらうぞ!」
隆二が力強く言って、右手を前に突き出した。
お母さん、私、そして斉藤さんの手がテーブルの真ん中で重なり合う。
「おーっ!」
四人の声が、綺麗に重なったところで、インターフォンが鳴った。