二人の穏やかな日常
真剣な表情できっぱり言い放ったお父さん。
に、また隆二がお酒をついだ。
何の迷いもなくまたそれを飲むお父さん。
……真剣な場面なのに、笑いそうになった。
お父さんの習性が、ここまで正確なものだとは思っていなかった。
お父さんは真面目だ。
いくら優しいといっても、いくら斉藤さんと友達になったといっても、一発でオッケーすることはまずないだろうと。
そしてお父さんはお酒が大好き。
自分のグラスにお酒を注がれたら飲む。
無意識のうちにでも。
「斉藤さん、モデルをされてるんですよね?それはこの先もずっとですか?その仕事で一生やっていけるんですか?」
「一生ではないですが、できるところまで続けようと思っています。だけどもし前原さんが反対するなら、今にでもモデルをやめます。どちらにしろ父の会社を次ぐことになってるんで、そっち一本でも」
「お父さんが会社を経営されてるんですね。どういう会社ですか?」
「小さな建設会社です。父で三代目になります」
なんだか面接のようだ。
斉藤さんの家が建設会社ということは初めて知った。
だけどやっぱり私は、斉藤さんにはやりたい仕事をやっていてほしい。
隆二にアイコンタクトを送った。
「あのねまーくん、男子高校生って一番性欲の強い時期なんですって」
「な、んだいきなり」
お酒を飲むお父さんに、お母さんが突然あのふわふわした雰囲気で妙なことを言い出す。
ぽかん、とした顔で三人お母さんを見た。
「だからね、そんな猿みたいな時期の男の子に百合の彼氏になってもらうより、ある程度は落ち着いた斉藤さんに彼氏になってもらう方が安心だと思うわ」
……どんな基準なんだ。
と思ったけど、お父さんは意外にもその理論にはしっくり来たらしく。
「さ、る……まあ確かにあの時期はな……猿だったもんな……」
なんだか実感の籠った一人言を溢す。
お父さんのそんな事情あまり聞きたくない。
「猿……」と呟いた隆二に、お母さんが「あんたは気にしなくて良いの」と切り捨てた。
「まあそれは置いとくとしてだな」
お父さんが咳払いした。