二人の穏やかな日常
「二橋、懐かしい響きだ……。学生の頃はよく裏にある本屋で参考書を揃えたな~」
「あ、リンリン堂ですか?僕もよく立ち寄ってました!立ち読みしてるとよく睨まれたものです」
「おっ、まだあるのかリンリン堂!私達の頃もそうだったんですよ。しかし当時は逆にそれが燃えたりして、何時間で追い出されるか挑戦したもんです!そうだ、林先生はまだいらっしゃいました?」
「薬理学のですか?私は文系で、教わったことないですが居ましたね。友人から林先生の薬理は難しい上に厳しくて一筋縄でいかないとよく耳にしました」
「そうなんだよ~」
なんだか二人の世界で盛り上がっている。
いくら何十年と離れた先輩後輩でもこうして盛り上がれるものなのか……。
お父さんのお酒を飲むペースがまた更に上がる。
……お父さんは酔うととにかく、上機嫌になる。
アルコール度数高めをリクエストした理由は、ここにあった。
しかしそこに斎藤さんがお父さんと同じ大学出身という条件が加わり、その効果は力を増した。
二人は暫く大学時代の思い出を語り合った。
そしてとうとう。
「OBとして、君を信用する!年の差なんて関係ないなーい!認めよう!」
お父さんはにこにこと笑顔で叫んだ。
OBとしてではなく、親として認めてほしかった……。だけどこの際贅沢は言わない。
「お父さん、ありがとう!」
「ありがとうございます!」
「わ~さすがまーくん格好良いわあ」
「百合良かったな!」
私達の笑顔を見てお父さんは更に舞い上がって「好きな人と結ばれるのがいっち番!愛美と結婚した俺はよーっく分かるんだよ~」と、お母さんを下の名で言う。
「やだわまーくんったら」
「まなみー」
「まーくんっ」
二人が手を握り合う。