Office Love
十分振り回されて、気付けばお昼前、


「美咲ちゃん、お昼、真子らと上のレストランで待ち合わせしてるねん。行こか。」
「はーい!!」


返事と顔は可愛えぇのに、君の態度は翻弄するだけやで、ほんま。
真子らは先に到着してたみたいで、僕の顔見た途端、二人とも笑ろとった。
そないにヤツれた顔してるんやろか?


「相当振り回されたみたいやんけ。」
「大丈夫ですか、市埼さん?」


二人揃って、心配してるやん。


「まぁ、そこそこ・・・・」
「楽しかったですよ!ねぇ、市埼さん!」


はははは、と笑うしかでけへん僕をバカにしてる真子に腹立つ。
もう、今日はいつもの僕ちゃうし。
けど、そないな一面も僕にはあったんやって、自笑してる僕もおる。


「ま、昼飯食おか。な、ギン。」


隣では、もう彩葉ちゃんと何を食べようか、きゃっきゃっ言うてる美咲ちゃん。
前までの僕やったら、こない面倒な子、相手しようとは思わんかったけど、美咲ちゃんだけはどうしても落としたい。
そない思うくらい、彼女に恋してんねやろねぇ。
恋やて。恋。


「これからどないする?どっか行きたいとこあるか?」
「美咲はどこか行きたいとこある?」
「えーっと、あの遊覧船乗りたいです。」


彼女が指さした方向にはこの湾を45分程で巡る大型遊覧船。
あー、ええね。ロマンチックやわ。


「ギン、俺ら電車で帰るから、後は二人で、よしなに。」


口角の端をグッと上げて真子が僕の耳元に言いに来た。
どうせ、真子も彩葉ちゃんと二人っきりになりたいんやろ。
そやけど、真子に囁かれても嬉しくもあらへん。


「ほな、美咲ちゃん、行こか。」


スマートに腰に手を回して、美咲ちゃんを誘導する・・・・はずが、何やの!!また、先行っとるし。
追い掛けて走るんは苦手やわ。けど、僕をこないに走らすんは君くらいなもんや。


「あれ~?平川さんと彩葉さんは?」
「あぁ、あの二人、二人っきりになりたい言うて先帰ったわ。美咲ちゃん、僕と二人でもええ?」
「もちろんですよ!市埼さんは良いんですか?私となんか・・・」
「君とがええから、誘ってんのやで。」


最上級の笑顔で微笑みかければ、美咲ちゃんもうっとり・・・って、もうまたチケット売り場行ってしもてるやんか!!
もう、翻弄され過ぎ、僕。
なんか、自信なくなってきたわ・・・・・。


「市埼さ~ん!!」


わかってる、わかってる。僕もう走るん疲れてしもてん。優雅に歩かせて。
君といると色んな一面の僕が見れて、嬉しいわ。って事にしとこ。



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