Office Love
今日も彩葉と貴井は残業で、修兵と仲よう帰っとる。


「なぁ、真子。クリスマス、約束したのか?」
「そないな状況ちゃうやんけ。それに約束せんでも俺と過ごすんは当たり前のことやろ。」
「そう思ってるのはお前だけで、向こうは思ってねぇかも知れねぇぜ。」
「そない言うお前はどうやねん?」
「俺?クリスマスだけは残業させねぇ。ギンに掛け合ってある。」


は?何それ?先手必勝?


「だから、クリスマスは24日から」
ホテルで過ごす。


そう勝ち誇ったかの様に言い放つ。


「それ、ギンも承知てん?」
「当たり前だろ。ってか、アイツもその日くらい残業したくねぇだろ。」


ほな、全員残業なしか?


「けど、吉田と綾瀬は残るらしいけど。」


はぁ?そのメンバーに彩葉も入っとるんか?


「七瀬も残業組らしぜ。」
「はぁ?なんやそれ。ええかげんせいよ。」


***


「おい。ギン」


次の日、朝一に二課に顔を出してギンを呼び付ける。


「何やの?朝から騒々しいなぁ。」
「24日、お前と貴井は残業なしてほんまか?」
「あぁ、そのこと。そうやで、イヅルと弓親に任せてん。で、アシスタントに彩葉ちゃんに残って貰う。」
「お前なぁ・・・・」


と、文句の続きを言おうとしたら、彩葉が出社して来よった。


「おはようございます、市埼さん、平川さん。」
「おはようさん、彩葉ちゃん。」
「気安う人の女に声掛けるな。」
「おぉ怖ッ。真子、そないにカリカリしてても何もええ事あらへんよ。」
「ど、どうしたんですか?」


俺も殺気に気付いたんか、彩葉が狼狽えながら聞いて来た。


「24日、彩葉ちゃんが残業なんが腹立つらしいよ。」
「ちゃうやろっ。お前が定時で上がるのが気に入らんねんっ。」
「けど、市埼さんの計らいで、25日お休みにして頂いたのに、24日まで定時で終わらせて頂いたら申し訳ないですよ。」


えっ?今、彩葉なんて言うた?
25日、休みにしてもろた、言うた?


「ご褒美や。イブに残業してくれる優しい彩葉ちゃんにクリスマスはお休みあげるんよ。僕、優しいやろ。」


クククと喉を鳴らして笑うギンの顔をただただ眺めることしかでけへん。
彩葉が休みでも、俺は仕事やんけ。
定時に終わればそっからはゆっくり出来るけど。


「あ、あと、彩葉ちゃんの彼氏の分の有給も取っといたったで。」


あー、僕ってサンタさんなんちゃう~?とか言いながらギンはプロジェクトブースブースへ消えてった。
彩葉の彼氏の分の有給。
彩葉の彼氏は俺。
俺の有給を勝手にギンが取った言うんか?


俺は急いで総務部へ足を運んだ。


「俺、25日、有給取った?」
「はい。申請頂いてますけど、何か?」
「あー、それやったらええねん。ありがと。」



ほんまにアイツは腹立つヤツや。
そやけど、口角は上がり顔がにやけるんはしゃーない事やな。


それぞれのクリスマスが訪れる。

< 38 / 51 >

この作品をシェア

pagetop