Office Love
section 7 番外編
カーテンから漏れる光で目を覚まし、重い瞼をゆっくり開ければ、疼くような鈍痛が腰の辺りに纏わりつく。
同時に目には愛して病まない胸板が広がる。
何か飲みに行こうと身体を動かせば、腰に乗せられた腕に力が籠った。




「キツっ・・・ちょっと力抜き・・」
「む・・・りっ・・・」




最奥を目指して進められるその熱に何度も意識を手離しそうになる。
その都度、『彩葉・・・』と、切なげに名前を呼ばれ、覚醒させられる。
何度も口づけられ、何度も啼かされ、何度も愛される。
腰を打ちつけられる度、持って行かれそうになる気持ちを奮い立たせ、しがみついた。
昨夜の光景が、色付いて甦る。


「っしんッ・・・じ・・さっ・・・・、もう・・だっ・・・・め・・」
「そないに締めつけんなや・・俺が持って行かれそうや・・・」


鼓膜さえも痺れさせて、繋がった部分だけでなく、視覚からも聴覚からもあなたは私に侵蝕してくる。
このまま何時間もこのままなら、私はあなたになってしまうんじゃないかってほど、揺さぶられて、愛されて、啼かされて。


なんだか、昨日の出来事が絵空事だった様に思えるのは、あなたが社内1,2を争うモテ男だから?
私が平凡な女だから?
多分、どちらも、だと思う。


一度、躯を合わせてしまえば、あなたは私から離れていってしまう様な気がして。
これで、終わっちゃう?そんな想いが私の瞳から、一筋の光となって零れ出た。


「何、泣いとんねん?」


えっ?さっきまで寝息を立てて気持ち良さそうに寝てたのに、あなたのその綺麗な色素の薄いブラウンの瞳に捕えられた。
目尻の端に溜まった滴をあなたの長い指が絡め取る。


「どないしたん?何で、泣いてるねん?」


フルフルと首を横に振る事しか出来ず、言葉に出してしまえば、それが現実になる様に思えた。
顔に掛かる髪を梳くって、そっと顔をあなたの方へ向けられる。


「泣きたいんは、こっちの方や。目覚めた時、お前おらんかったらどないしよ、思ててん。」



【何を不安がってんねん、俺はもう何もかも、お前のもんや。】



そう言い終わるか終わらないか、あなたの口で私のそれは塞がれた。


絵空事でもなんでもない、これは私の現実。




< 49 / 51 >

この作品をシェア

pagetop