ダメージ

日常。

7時59分。

学校に着いた

先生たちが次々到着する生徒に挨拶してるけど、あたしには薄目で見て、『おはょ…谷口…』と言う。

先生まで、最低だ

クソだ、クソ学校だ、ここは

3年2組24番 谷口真子

そう書かれ、貼られてあるはずの名前シールはどこかへ姿を消した

多分あの子たちだ

綺麗にシールを剥がせなかったのだろう

まだのりがへばりついてぼろぼろになっていた

そののりにはうっすらと、印字の真子の『子』だけがのこっている

これを剥がしているあの子たちの光景を思い出してみると、腹が立ってくる

「ぎゃはは、あはは」と大笑いしながらやったに違いない

そのシールの代わりに、太字の油性ペンでこう書いてある

『クズ口 クズ子』

クズはどっちだ

上靴を取り出す

想像付いたでしょ?

大当たり、上靴も真っ黒

傷傷で糸がほつれまくり

おまけにゴムの部分がべろんべろん

買い換えないのかって?

言われる前から何度も何度も買い換えてますって

何度買い換えてもすぐにこうなるの、分かるでしょ?

それも、お金の無駄

そんな上靴を履いて教室に向かう

がやがやと賑わう廊下をあたしは静かに歩く

見て、みんながあたしのために道を開けてくれてる

って、そんなわけない、避けてるだけ

周りからぼそぼそと話し声が聞こえる

「来た、クズ口」とか、

「やだあ~」とか。

ほかのクラスの子たちばかりなのにあたしの事はみんな知ってる

ある意味有名人だ、あたし

3年2組。

扉を開けて中に入る

やっぱりここもうるさい

あたしの席は窓側の後ろから3番目

入口から結構な距離がある

結構といっても5メートル

この距離さえも長く感じる事なんて、普通の人には分からないだろうけど

あたしが教室に入ったとたんに騒がしかったのが一気に静まり返る

みんながこっちを見てる

笑い声も聞こえる

席に着いた

また今日もあった

ありきたりな机の落書き

椅子に貼り付けてある画びょう

また、憂鬱な今日という長い一日が始まる




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