その時にはもう遅かった
同じ企画部、大まかな枠は同じだけれどグループが違えば仕事無いようだって全く違う。

親睦会と銘打つ飲み会だって同じ訳じゃない。

でもフロアが同じだと何かしら接点はあるのだ。

コピー機が同じだとか休憩のタイミングが同じだとか、立ち話に何となく迎えられたりだとか。

少なくとも週に一回程度は関わるものだと知った。

それはあのファーストインパクトがあってからだ。

苦手意識が生まれた相手は少なくとも自分に害がない程度には意識してしまう。

思えばここから夏目くんの罠にハマっていたのかもしれない。

PCとの睨み合い、ふと一息ついて顔を上げれば何となく目が合うとか。

自販機でばったりだとか。

「あ。神崎さん、お疲れ様です。」

「…お疲れ様です。」

声をかけられたら無視する訳にはいかないじゃないの。

ここまで来たからにはあからさまに引き返すことも出来ないし夏目くんの目の前にある自販機まで突き進むしかない。

ああ、やだな。

見られている気がする、さっさと買って席で飲もう。

「そんな嫌な顔しなくても俺がいなくなるんでゆっくりしてっていいですよ。」

淡々とした声が私の背中に語りかけてきた。

思わず反応して少しだけ後ろに顔を向ければ、何の感情か読み取れない夏目くんがこっちを見ている。

「分かりやすい反応で助かります。」

ほぼ紙コップを口につけた状態で話す夏目くんは笑っているようにも怒っているようにも見えなかった。

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