その時にはもう遅かった
「じゃあまた。」

無残にも放置された私は何事も無かったように立ち去っていく背中をまた見送る羽目になるのだ。

なんて仕打ちなんだろう。

あんなにストレートに告白されたのなんて高校以来じゃないの?

大人になると雰囲気で察していくものじゃないの?

付き合おうかとか、口にしてもその位なんだと思っていたのに。

「神崎さんが好きだからです。」

こんなに直球で言われるなんて、反則すぎる。

「しかも言い逃げ…っ?!一体どういうつもりなによ!」

こちらをチラリとも見ようとしないその姿はほぼ無関心にも感じられて腹が立つ。

普通好きな人に告白する時はドキドキしたりでとても平常心ではいられない筈なのに、これっぽっちもそんな様子無かった。

目が泳ぐ訳でも無く、声が上ずる訳でも無く。

そう言えば私に笑いかける夏目くんとか見たことないじゃない。

その後仕事に戻るまで必要以上の時間を要したなんて考えに容易いでしょう。

時間が経てば経つほど分からなくなる夏目くんの心理と彼自身の情報。

年上?それさえも知らない。

思えばこれも夏目くんの罠だったのだ。


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