To smile


目の前に帰りたい場所があるのに

何もできないもどかしさに苛立つ私の後ろで、

男は相変わらず何も関心がないように

白砂の上に寝転び、目を閉じている。


「あの…、どう思いますか?

何か戻れる方法とか思いつきませんか…?」


何も期待はしていないが、

2人の間の沈黙か嫌で問いかけてみる。



すると、男は目を閉じたまま静かに答えた。


「その湖の中に飛び込んでみれば?

まぁ、川の水と同じだと考えれば、

死ぬかもしれないけど…。」



なるほど…。

確かに湖の向こうに現実世界があるなら、

湖の中から行けるかもしれない。


でも、この人の言う通り

死んでしまう可能性も高いよね…。

私は湖を見つめたまま、暫く考えこんだ。



…このまま何もしないよりは、

少しでも向こうに帰れるかもしれない

可能性にかけよう…!



< 10 / 35 >

この作品をシェア

pagetop