To smile


男は私と目を合わせたまま、

ゆっくりと話始めた。


「あんた…俺が見えるんだな…。」


そう尋ねる男は、

とても戸惑っているように見える。



「見えるよ…。

けど、みんなには見えてないんだね。

しかも、体すり抜けてた…。」



これは、よく聞く 幽霊 というものなの…?

いったい何が起きたんだろう。



「私が湖に入った後、あなたも入ったの?

私は体に戻れたけど、

あなたは…死んでしまったってこと…?」



自分だけが助かったかもしれない

という後ろめたさで、

私は男の顔を見れないまま問いかける。


……。


少し沈黙してから、男は話し始めた。



「あんたが、顔だけ入れるって言ったのに、

突然すごい体勢で

湖に落ちそうになったから、

思わず手を掴んだら、一緒に引っ張られた。」



…私のこと、助けようとしてくれたんだ。

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