To smile

この人言葉は悪いけど、

本当はいい人なのかもしれない。


そう思っていると、男は続けた。



「んで、目が覚めたらここにいたけど、

あんたは寝てるし、

フラフラしてたら騒ぐ声が聞こえて、

見に来たらあんたには俺が見えてた。

って感じかな。」



こんな不思議体験って、本当にあるんだ。

どうしよう…

この人がここに来ちゃったのは、

私のせいってことだよね…。


まだ理解しきれない頭で必死に考えていると、

男が小さく笑う声が聞こえた。



「すっごい顔…。

そんな必死に悩まなくていいよ。

どうせあそこにいるのも飽きてたし、

いつかはどうにかなるだろ。」



私は見れずにいた顔を、男に向けた。

男は一度目を合わせると、

優しい顔で語りかける。



「あんたは望み通り帰ってこれたんだから、

俺のことなんか忘れて、

これからの人生楽しめよ。」



そう言って笑う男の顔を見て、

素直に「はい」なんて言えるわけがない。

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