To smile


この人のために、

私にできることが何かないかな…。


その時、

前に男が言っていたことを思い出した。


『かろうじて自分の名前わかるくらいに

なっちゃたし…』


そうだ…!

この人はこの世界にいても、

帰る場所がわからないんだ…!


「あの…名前、教えてもらっても

いいですか?」


男は一瞬驚いた顔をしたが、

一呼吸おいてから答える。


「ハルト…。まぁ、すぐに忘れてよ。」


自嘲気味に笑いながら顔を背ける

ハルトと名乗った男に、

私は小さく決意したことを伝える。


「ハルトさん、私にあなたの記憶を

取り戻す手伝いをさせて下さい!!」


ハルトさんは驚いた顔で私を見つめると、

眉間にしわを寄せた。

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