To smile
そして、今は家へ向かう車の中。
久しぶりに病院から出られた嬉しさから、
帰る途中にある近くの公園で
降ろしてもらうことにした。
「本当に1人で大丈夫…?
気をつけて歩くのよ!」
「大丈夫だって!
ちょっと外の空気を吸いたいから、お願い!」
心配そうな母親をなんとかなだめ、
公園の前で車を降りる。
ハルはというと、
想像していた幽霊とは違い、
壁をすり抜けたり
空を飛んだりできるわけではなく、
私と一緒に移動している。
「なんかもっと色々できると思ったのに、
全然おもしろくねーな。」
と、不満そうだ。
そんな姿に軽く笑みをこぼしながら、
私は話し始める。
「これからハルも1人でこの辺歩くことも
あると思うから、少し道わかってた方が
いいかなーと思って。」
ハルはなるほど、という顔をしている。
「少しの間かもしれないけど、
ハルにはちゃんと居場所があるからね!」
思いがけない言葉にハルは一瞬固まるが、
すぐに少し照れたような笑顔を見せた。
またハルが笑顔を見せてくれたことを
嬉しく思っていると、
突然不思議な感覚に襲われる。
視線を感じて下を見ると、
幼稚園児くらいの男の子が、
ジーっと私を見ていた…。