To smile
ゆうた君が向かう先には、
人通りの少ない道の横断歩道の端に
花をたむける女の人の姿があった。
女の人は泣き腫らしたような目をして、
明らかに元気がない。
「お母さん、あのね、
公園でお姉ちゃんに会ったの。」
必死に話かけるゆうた君をみようともせず、
目を閉じて手を合わせている。
…。
とても嫌な予感がした。
きっとハルも同じ事を考えてる。
その時、女の人がフラつき、
倒れそうになった。
「お母さん!!」
「危ないっ!」
私はとっさにかけより、女の人を支えた。
――― ! ――――
女の人に触れた瞬間、
ゆうた君と手をつないだ時と同じ
不思議な感覚に襲われる。
「すみません…。」
女の人は弱々しく声を発した。
そして、足元にいるゆうた君に気づくと
目を見開いた。
「ゆうた…!?……なんで…」
女の人の目にはみるみる涙が溢れ、
ゆうた君に触れようとした手は
無情にも体をすり抜け、空を切る。
「ゆうた…ごめんね。
お母さんがあの時1人にしなかったら…!」
ゆうた君は一生懸命に首を振る。
「お母さん、ごめんね。
お母さんのこと嫌いって言ったけど、
ほんとうは大好きだよ!
だからもう泣かないで。」