To smile


「ハル…ありがとう…。」


と、そこで私は改めてハルに頬を

つねられていることに気づく。


「ハル、私に触れるの…?」


そう言われて、ハルも私の頬に触れている

自分の手をまじまじと見る。


そして、一度手を離すと、

もう一度強く私の頬をつねった。


「いたっ…!ちょっと!!

他にも確かめる方法があるでしょ…!」


「ハハッ…そうだよな。悪い悪い。

そういえば、ゆうたとも手つなげてたしな。」


笑いながらそう言って、

手を離したかと思うと、

フワッと頭に重みを感じた。


ハルは私の頭に手を置きながら、

優しい声で話す。



「とにかくあんたは生きてていいんだよ。

優しいのはわかるけど、

あんま考えすぎるとハゲるぞ。」



最後に、ポンポンッと軽く頭を叩き、

ハルの手が離れていく。


温度は感じられないけれど、

とても優しいその手の感覚に、

私の心臓はドキドキしていた。


「ほら、早く帰らないとお前の

おふくろさんすげー心配するぞ。」


「そうだった…!!」


私は急いでハルの後を追いかけ、

隣に並んで歩く。


さっきまで明るかった空は茜色に染まり、

夕日が2人を照らしている。


私は…

道にできた1人分しかない影を見て、

そっと、寂しさを感じた。

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