To smile

―――〈ハルトside〉―――


パタンッ。

ドアが閉まり、笑咲が部屋を出ていくと、

俺は子供用テントの天井を見上げる。


全然知らない奴のために、

わざわざこんなスペースまで作って…

ほんとお人好しだよな。


あいつは申し訳なさそうにしてたけど、

正直久々に落ち着く。

目つぶると、寝れそう…。

こんな状態でも眠くなったりするんだな。


そう思っている間にも、

俺の意識は遠くなっていった。


……。


「ねぇ!」


……………。


「ねぇ、ハルト!!」


懐かしい声に呼ばれて目を開けると、

そこには写真の女が座っていた。


――…!


ここ、どこだ!?


辺りを見回すと、

確かに見覚えのある部屋の中だった。


「ハルト、どうしたの?

ちゃんと私の話聞いてる!?」


女は心配そうに俺の顔を覗き込む。

会いたいと思っていた女を前に、

俺の胸の鼓動が早くなる。


それでも、やはり名前も思い出せないままで、

俺はどう反応していいかわからず、

とりあえず答える。


「悪い…聞いてなかった。」


女は呆れたようにため息をついて、

もう一度俺の目を見て話始める。


「だから、明日は遅くなるから

先にご飯食べててね。」


その言葉を聞いた途端、

俺の口から勝手に言葉が出た。


「…あいつのところに行くのか…?」


女は顔を赤くし、

気まずそうに視線を反らした。

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