To smile


……。


しばらく無言で抱きしめられていると、

ゆっくりとハルが話し出した。


「あの女…

会わない方がいいかもしれない…。」


突然そんなことを言い出すなんて、

何か思い出したのかな…?

私は黙ってハルの言葉を待った。


「あいつは、俺に会わない方が

幸せなんじゃないかな…。」


珍しく弱気なハルに驚きつつ、

自分よりも相手のことを考えるあたりが

ハルらしい。


でも…


「そんな弱気なことを言うのはこの口か!?」


私はハルの腕をほどいて、頬をつねった。


「……。」


ハルは驚いた顔をして固まっている。



「ハルが教えてくれたんだよ?

考えすぎるなって。

後悔するより、会ってみようよ。

もし辛い結果が待ってたら、

私がなぐさめてあげるからさ…!」



私はハルが安心できるように、

わざと明るく振る舞った。


ハルは少し考えてから、

いつもの調子に戻って答える。



「……そうだな…。

マイナス思考なお前に励まされるなんて、

俺としたことが…!」


そして、仕返しだと言わんばかりに

私の頬をつねりながら呟いた。


「ありがとう。」


そう言って笑うハルにホッとしながら、

彼の抱える辛さがなんなのか考える。



今は聞けないけど、

いつか話してくれたら嬉しいな。

そんな風に思いながら、

これから待ち受ける未来に備えて、

今はゆっくり…ひと休みしよう。



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