To smile


「さ……の……。」


男が何か言った気がするけれど、

聞こえない。


「え…?…何ですか…?」


さっきより大きい声で男が話し出す。


「三途の川っていうやつじゃないの?これ。

オレ、なんとなく覚えてるけど、

確かバイクで事故ったんだよな…。」



まさか…。

一気に血の気が引き、

今にも川に引き込まれそうな感覚に襲われる。


そして…頭に浮かぶのは、

車のヘッドライトとクラクションの音…。


「そうだ…私帰り道で車に…。

いやっ…!!私まだ死にたくない……!」


急いで川から逃げようとするけれど、

パニックでうまく歩けない。


そんな私を見かねたのか、

男は溜め息をつきながら、手を差し出した。


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