To smile
「これ…あの男?」
そこには、少し幼さの残る少年と、
少女が一緒に写っていた。
あの男もこんな風に笑うんだ…。
彼女かな…?
記憶なくなったって言ってたけど、
彼女のことも忘れちゃったのかな…?
そう考えると、
あの男も本当は辛いのかもしれない…
と思えてくる。
私は写真を持って男に近づき、
強引に手に写真を握らせた。
「これ、多分あなたがここに来る前に
最後に手に持ってたものだと思う。
どんな理由で迷ってたか知らないけど、
あなたにも大切な人がいるんじゃないかな。」
男は写真を見て少し考えると、
悲しそうにつぶやいた。
「すげー大切だったはずなのに、
思い出せないな…。」
そして暫く黙りこむと、
ふとある方向を指差して言った。
「一度だけ、あっちで人を見た。
一瞬光ったと思ったら姿は消えてた。
もしかしたら、
帰れるヒントがあるかもしれない。」
「ほんとに…!?」
少しでも帰れる可能性があるなら…
私は男の指す方向へと足を向けた。