To smile
湖の向こうに
白砂にはすぐに消えてしまう足跡が2人分。
まさかの展開に、
私は恐る恐るたずねる。
「あの…一緒に行ってくれるんですか?」
生きるか迷っていたと言った男は、
今私の前を歩いている。
「あんた危なっかしいし、
俺も光のことは気になってたから…。」
「…ありがとう…ございます。」
少し納得いかない部分もあるけど、
正直1人だと不安でいっぱいだから、
ここは大人しくしておこう。
「そういえば、もう名前くらいしか
覚えてないって言ってましたけど、
何ていうんですか?」
「……。」
明るく話しかけたが、返事はない。
「私が覚えてれば、もしあなたが忘れても
教えてあげられるかも!
って…思ったんですけど…。」
最後の方は声が小さくなりながらも
話続けるが、
男は前を向いたまま無言で歩き続ける。
……。
私なにこんな人に親切しようとしてるんだろ。
でも、黙ってると不安に押し潰されそう…。
また沈黙に耐えかねた私は、
自分のことを話すことにした。