ありったけの「好き」を、君に。
私は暫く沖縄の大自然に圧倒されていた。


ふいに、12月の南国の風が頬を撫でた。



それがなんだか擽ったくて、スウ…と大きく息を吸ったそのとき。






「委員長ォォォオオ!ボーッとするな、点呼!!」






後ろから、学年主任の怒鳴り声が聞こえてきた。




「はっ、はいいい!します!!」



私は心臓が止まる勢いで驚いて、急いで点呼を始めた。



「7組こっちー!数えるよー」




そう、私は2年7組の学級委員長なのだ。



修学旅行時の学級委員長ほど多忙な中学生はいないだろう。




この点呼が終わってホテルに荷物を預けたら、ご飯より先に307号室で班長会議が待っている。

風呂から出たら委員長会議。

バスを乗り降りするたびに点呼。

ガイドさんに毎回ご挨拶。

レクリエーションの企画。



数えだしたら止まらなくなるくらいに、とにかく多いのだ。





こんな感じなら加賀と仲良くなる時間なんて無いかな、と思いながら点呼を終える。




はあ、と溜息を吐いて見上げると、空はオレンジと藍色というなんとも不思議なグラデーションに染まっていた。









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