ありったけの「好き」を、君に。
『802号室』
金色の文字でそう書かれた扉をゆっくりと押し、ガラガラとキャリーバッグを連れて部屋の中へ入った。
「…… っ疲れた…」
殆ど無意識にそう呟いてベッドに倒れ込む。
同室のましろと美奈も同じようにばたりと座り込んだ。
「……今何時?」
班長会議、何時からだったかな…と、ふらふらな意識の中で考えた。
美奈が6時半、と答えてくれる。
……………ん?
6時半……?
私の体が無意識に起き上がった。
「ちょっと、班長会議行ってくる…!!」
班長会議は、6時半から。
こういう大きな行事の打ち合わせは5分前集合が原則だ、とあの学年主任に口うるさく言われていた。
もう遅刻扱いは確実だ。
とにかく、1秒でも早く307号室に行かないと。
背後でいってらしゃい、と気怠げな美奈の声が聞こえたような気がする。
返事をする間もなく私は廊下へ飛び出し、ゆっくりと扉を閉ざし始めたエレベーターになんとか乗り込んだ。
結構広めなエレベーター内に、私以外はいない。
「…はあ」
落ち着いて呼吸を整えてから、持っていた手鏡を見て乱れた前髪をとく。
307号室まで走り抜けるため、壁にもたれかかって休憩をしていると。
ポーン
5階でエレベーターが止まった。