ありったけの「好き」を、君に。


『802号室』


金色の文字でそう書かれた扉をゆっくりと押し、ガラガラとキャリーバッグを連れて部屋の中へ入った。







「…… っ疲れた…」



殆ど無意識にそう呟いてベッドに倒れ込む。


同室のましろと美奈も同じようにばたりと座り込んだ。






「……今何時?」



班長会議、何時からだったかな…と、ふらふらな意識の中で考えた。



美奈が6時半、と答えてくれる。






……………ん?






6時半……?







私の体が無意識に起き上がった。



「ちょっと、班長会議行ってくる…!!」



班長会議は、6時半から。


こういう大きな行事の打ち合わせは5分前集合が原則だ、とあの学年主任に口うるさく言われていた。




もう遅刻扱いは確実だ。



とにかく、1秒でも早く307号室に行かないと。





背後でいってらしゃい、と気怠げな美奈の声が聞こえたような気がする。


返事をする間もなく私は廊下へ飛び出し、ゆっくりと扉を閉ざし始めたエレベーターになんとか乗り込んだ。




結構広めなエレベーター内に、私以外はいない。





「…はあ」




落ち着いて呼吸を整えてから、持っていた手鏡を見て乱れた前髪をとく。




307号室まで走り抜けるため、壁にもたれかかって休憩をしていると。






ポーン







5階でエレベーターが止まった。






< 11 / 11 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop