ありったけの「好き」を、君に。
よし、だんだん気合いが入ってきた。


えーと、今日の課題は…


そう思って黒板を見上げる。



『自分が1番気に入っている文房具を模写しよう!』



文房具か。



これでいいか。真っ白なシャーペン。


いつもお世話になってるからね。



私が鉛筆を握ったとき、隣の席の加賀瑛斗が話しかけてきた。



加賀瑛斗は、人にちょっかいを出すのが大好きだ。



友達にドッキリを仕掛けたり、授業に使う資料を隠したり。


けれど容姿が整っているためか、結構モテる。


中1のときは彼女がいたけれど、中2になって別れたらしい。



「ひいちゃん、それ描くんだ?」



ひいちゃんとは私、相模ひとかのこと。



中2の最初に隣の席だったのが加賀瑛斗で、ひいちゃんというあだ名はそのときについた。



私が周りの女子からひいちゃんと呼ばれていたから。



「うん、これが1番気に入ってるから」



「へぇ……そういえば、最近ひいちゃん疲れてる感じする」



シャーペンの話はどこに行ったんだ。



というか、まあ、疲れ気味なのは正解なんだけどね。



「私にだって悩み事のひとつやふたつありますよーだ」



わざと元気に答えてみたが、加賀の反応は思っていたのと違った。



「意外………話してみ?すっきりするかもし…」



「加賀、相模、静かに作業しなさい」



私たちの話は先生の注意によって中断。



「…はぁい」



私は取り敢えず返事をして、加賀の方に向きかけていた意識を机の上のシャーペンに戻した。






意外、は私の台詞だ。



あっそう、とか言って適当に流すと思ってた。



少なくとも、今まではそうだったから。





『話してみ?』



そんな風に言葉をかけられて、何故か少し









ーーーー嬉しくなった。














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